元町商店街で、ちょっとひと休みしたい時に、いつもその空間が浮かぶ喫茶店が、一番街の「あじさい喫茶」です。階段を上ると、そこはひと昔前の、なんとも言えない手触りの良い空間が広がっています。「神戸家具」で店内の椅子やテーブルが設えられているから、でしょうか。
そこで、今回は、「神戸家具」のことを調べてみました。
開港と共に、居留地などで外国人が住んだり仕事をするようになると、その暮らしに合わせて家具や装飾品などが持ち込まれてきました。祖父母の代から受け継いだ家具を長く愛用するのが当たり前のこと。やがて、それらの補修などを頼まれ、彼らの使っている西洋家具を参考にしながら、見よう見まねで応じたのが、神戸の船大工さんや家具職人さんでした。
西洋家具の発祥は、神戸と横浜と言われてますが、開港されていた他市と比べ、今日まで「神戸家具」として確立されているのも、神戸ならではです。
いずれも単に西洋の模倣にとどまらず、落ち着いたヨーロッパ的なデザインをベースにしながらも、そこには日本の職人さんの丁寧な技が随所に駆使されています。それは、風見鶏の館とか外国人墓地の石碑などにも、その職人さんたちの技が活かされているのと同様です。
明治5年創業の「永田良介商店」は今日までその流れを汲んで神戸家具の王さまとして営業されています。
元町商店街の「田村家具」さんは昭和22年に道具屋として創業し、元町商店街に移転してから神戸家具を扱い始めた、ということです。3代目田村嘉久さんは、木が一番好きだと、言われます。材木として使える木になるまでに60年以上かかり、切り出されてから製材されて家具になるまでにさらに10年。せめてそれ以上の年月をかけて家具と人生を共にしてほしい、と田村さんは語られてます。
元町商店街五丁目、田村家具で、神戸らしいお洒落な、それでいて優しくて暖かな家具たちの、静かな息づかいに耳をそばだててみてください。
2022-11